
派遣先の仕事も職場の人間関係も気に入っている。ただ、派遣会社の担当者と話が噛み合わない。連絡が遅い。同じ仕事なのに別の派遣会社から来ている人のほうが時給が高い。
こういうとき、職場はそのままで派遣会社だけ変えられないかと考える人は少なくありません。派遣先を変えずに派遣元だけを変えることは、法律上できます。
ただし本人の希望だけでは成立せず、派遣先の協力と、いくつかの条件をクリアする必要があります。
派遣会社登録ナビが2026年2月に実施した派遣社員1,005人への調査でも、直近の派遣就業で経験した不満の上位に「求人紹介が少ない・希望に合う求人が来ない(17.6%)」「連絡が遅い・進捗が分からない(13.2%)」が挙がっています。
担当者の対応や紹介力を理由に派遣会社を変えたいと考えるのは、珍しい動機ではありません。
このページでは、同じ派遣先に残ったまま派遣元を変えるための条件と、3年ルール・抵触日の扱い、有給や社会保険の引き継ぎを整理します。
派遣元だけ変えて同じ派遣先で働くことは法律上できる
用語を整理します。派遣元は雇用契約を結ぶ派遣会社、派遣先は実際に働く職場です。給与を払うのは派遣元、仕事の指示を出すのは派遣先という関係になります。
この2つは別々の契約で成り立っているため、派遣先との労働者派遣契約を新しい派遣会社との契約に切り替えれば、働く場所を変えずに雇用主だけを変えることは可能です。これを禁じる規定は労働者派遣法にありません。
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実際、派遣先の企業側が複数の派遣会社と取引しているケースは珍しくなく、同じ部署に別々の派遣会社から来たスタッフが並んで働いている職場もあります。
「派遣先が人を指名してはいけない」は努力義務
ここで引っかかるのが、派遣先による特定目的行為の禁止です。労働者派遣法第26条第7項は、紹介予定派遣を除き、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないよう努めなければならないと定めています。事前面接や履歴書の提出要求、年齢・性別の限定などがこれにあたります。
注意したいのは、この条文が「してはならない」ではなく「努めなければならない」と書かれている点です。つまり努力義務であり、違反しても罰則規定はありません。実務では労働局からの是正指導という形で対応されます。
なお、派遣スタッフ本人の希望で職場見学に行くことや履歴書を送ることは、特定目的行為にはあたりません。また、直接雇用を前提とする紹介予定派遣は、この規定の対象外として面接や選考が認められています。
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罰則がないこともあって、派遣先が「あの人に残ってほしい」と新しい派遣会社に伝える形で切り替えが進む例は実際に存在します。ただしこれはグレーな運用であり、派遣先が慎重な企業ほど応じてくれません。
本人の希望だけでは動かない
派遣会社を変えるということは、派遣先にとっては取引先の変更です。新しい派遣会社と契約書を結び直し、単価を交渉し、社内の稟議を通す必要があります。
その手間をかけてでも残ってほしいと思われていなければ、話は前に進みません。就業して間もない時期に切り替えを持ちかけても、派遣先には応じる理由がないというのが現実です。
派遣スタッフの声:担当者の対応に不満があって派遣会社を変えたいと伝えたが、派遣先の担当課長から「今の契約が終わるまでは動かせない」と言われた。契約更新のタイミングまで待つことになった。 出典:口コミサイト/編集部要約
派遣会社を変えて同じ職場に残れるかを分ける3つの条件
派遣先にとって手間をかける価値があるか
業務を任せられる、引き継ぎコストがかかる、代わりを探すのが面倒。派遣先がそう考える状態になっていれば、切り替えの相談に乗ってもらえる余地が生まれます。逆にここが満たされていなければ、他の条件をいくら確認しても話は進みません。
目安として、少なくとも1回は契約更新を経て、担当業務を一人で回せるようになってからが現実的です。
契約書に再派遣を制限する条項がないか
派遣先と派遣会社の労働者派遣契約には、「契約終了後◯か月以内は、当該派遣労働者を他の派遣会社経由で受け入れない」といった条項が入っていることがあります。引き抜き防止のための規定です。
この条項がある場合、期間が明けるまで切り替えはできません。派遣先の担当者に確認してもらうか、新しい派遣会社の営業担当に調べてもらうことになります。
新しい派遣会社が派遣先と取引できるか
切り替え先の派遣会社が、その派遣先と既に取引していれば話は早く進みます。取引がない場合は新規開拓からになり、成立しないこともあります。
大手派遣会社は取引先の数が多いため、すでに契約がある可能性は高くなります。登録の際に「この会社に派遣した実績はありますか」と聞いてみると判断材料になります。
先ほどの1,005人調査では、就業前に派遣会社を選ぶ際に重視したこととして『求人数の多さ(希望職種・勤務地の選択肢)』が44.7%で1位でした。求人数の多さは、そのまま取引先の広さでもあります。切り替え先を検討するときも、この観点は判断材料になります。
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3年ルールと抵触日は派遣会社を変えてもリセットされない
派遣会社を変えれば3年のカウントがゼロに戻るのではないか。この点を期待して切り替えを考える人がいますが、答えはノーです。
2015年の労働者派遣法改正で導入された期間制限には、事業所単位と個人単位の2種類があります。
個人単位の抵触日は派遣元が替わっても通算される
個人単位の期間制限は、派遣先の同一の組織単位(課・グループなど)で同じ派遣労働者を3年を超えて受け入れられないというルールです。
厚生労働省の平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A(第3集)でも、派遣元が変わった場合や担当業務が変わった場合でも、同一の組織単位で就業しているのであれば受け入れ期間は通算されると整理されています。
なお、同一の組織単位での就業が3か月を超えて途切れた場合は通算されません。いわゆるクーリング期間です。
事業所単位の抵触日は派遣先に紐づく
もうひとつが事業所単位の期間制限で、派遣先の同一事業所で派遣を受け入れられるのは原則3年です。3年を超えて受け入れるには、派遣先が社内の労働組合から意見を聴く手続きを踏む必要があります。
対象になるのは、その事業所の従業員の過半数が加入している労働組合です。該当する組合がない会社では、従業員の過半数を代表する人を選んだうえで、その人から意見を聴きます。
この抵触日は派遣先の事業所に紐づくため、派遣会社が替わってもそのまま引き継がれます。新しい派遣会社と契約しても、事業所抵触日を超えて働くことはできません。しかも事業所単位のほうが個人単位より優先されるため、事業所抵触日が先に来る場合はそこで打ち切りです。
切り替えを検討するときは、派遣先の事業所抵触日がいつなのかを必ず確認してください。抵触日は派遣先から派遣会社へ通知される情報なので、担当者に聞けばわかります。
課やグループが変われば個人単位は数え直しになる
個人単位の期間制限は組織単位ごとのルールです。営業一課から営業二課へ異動すれば、個人単位のカウントは改めて起算されます。同じフロア、似た業務内容のまま3年を超えて働き続けられる場合があるのはこのためです。
ただし条件が2つあります。ひとつは、派遣先の事業所抵触日が延長されていること。事業所のほうが先に上限を迎えていれば、課を移っても働き続けられません。
もうひとつは、その異動が名前だけの変更になっていないことです。所属の名称が変わっても、担当する仕事の中身も指示を出す上司も前と同じであれば、実態としては同じ課にいるとみなされます。この場合、3年のカウントは続いたままです。
また、期間制限をやりくりする目的だけの異動は派遣法の趣旨に反するものとして問題視されます。
3年の期間制限がかからないケース
次に該当する場合、事業所単位・個人単位の期間制限は適用されません。
- 派遣会社と無期雇用契約を結んでいる派遣労働者
- 60歳以上の派遣労働者
- 終期が明確な有期プロジェクト業務
- 日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下)
- 産前産後休業・育児休業・介護休業を取得する労働者の代替業務
同じ職場で長く働きたい場合、派遣会社を変えるより無期雇用への切り替えや、派遣先への直接雇用を検討したほうが早いことがあります。
同じ職場で長く働きたい場合、派遣会社を替えるより無期雇用への切り替えや、派遣先への直接雇用を検討したほうが早いことがあります。
派遣会社を変えると引き継がれないもの
雇用主が変わるため、前の派遣会社での勤続に紐づく権利は基本的に持ち越せません。
有給休暇はゼロに戻る
年次有給休暇は雇用主ごとに発生します。新しい派遣会社では、雇入れの日から6か月継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した時点で初めて付与されます。
前の派遣会社に残っている有給は、退職前に消化しておかないと消えます。切り替えのスケジュールを組むときは、残日数の消化期間を織り込んでください。
社会保険は空白期間の有無で変わる
健康保険と厚生年金は、雇用主ごとに加入し直す形になります。前の派遣会社で資格を失い、新しい派遣会社であらためて資格を取得する流れです。
加入条件を満たしていて就業が途切れなければ、被保険者である期間は空かずに済みます。保険証は、新しい派遣会社が加入している保険者のものに変わります。
一方、前の派遣会社を辞めた日と、新しい派遣会社で働き始める日のあいだが空くと、その期間は会社の健康保険・厚生年金から外れます。
保険料は日割りではなく、その月の末日時点でどの制度に入っているかで決まります。同じ月のうちに次の派遣会社で加入できれば、月末は会社の健康保険に戻っているため、国民健康保険料はかかりません。月をまたいで空いた場合は、その月の分を国民健康保険と国民年金として自分で払うことになります。
保険料がかからない場合でも、空白の期間に病院にかかることを考えると、市区町村での国民健康保険の加入手続きは必要です。前の派遣会社の健康保険を任意で続ける、家族の扶養に入るという選択肢もあります。切り替えの日程は、月をまたがないように組むと負担が軽くなります。
雇用保険については、離職から1年以内に再就職して被保険者になれば、被保険者期間が通算されます。
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時給と交通費は交渉し直しになる
新しい派遣会社との契約なので、時給も交通費も一から決まります。上がることもあれば下がることもあります。
同じ業務でも派遣会社によって時給が違うのは、派遣先が支払う派遣料金と、そこから引かれるマージン率が会社ごとに異なるためです。切り替えを打診する前に、替え先の候補となる派遣会社で同種の求人の時給水準を調べておくと判断しやすくなります。
派遣会社のマージン率一覧|大手9社の最新公開データと平均相場
派遣会社を変える手順とタイミング
- 切り替え先の派遣会社に登録し、その派遣先との取引があるか確認する。取引実績がなければ成立しない可能性が高いため、ここが最初の分岐点になります。
- 派遣先の事業所抵触日と、自分の個人抵触日を確認する。残り期間が短ければ切り替えの意味が薄れます。
- 派遣先の直属の上司や受け入れ担当者に相談する。今の派遣会社の担当者ではなく、派遣先側から動いてもらう形になります。
- 今の派遣会社と派遣先が結んでいる契約の中身を、派遣先に確認してもらう。契約が終わってから一定期間は、別の派遣会社を通して同じ人を受け入れない、という取り決めが入っていることがあります。これがあると、期間が明けるまで切り替えできません。
- 現在の契約期間が満了するタイミングに合わせて切り替える。契約途中の切り替えは派遣先にも派遣会社にも負担が大きく、応じてもらえません。
- 前の派遣会社で有給を消化し、退職手続きを済ませる。
タイミングは契約更新の1〜2か月前が目安です。更新の意向確認が来る前に相談しておくと、派遣先も動きやすくなります。
現在の派遣会社に更新しない意向を伝える場面が気まずいと感じる場合は、伝え方を整理してから臨むと進めやすくなります。
派遣の契約更新しないことが気まずい、辞めるのが気まづい方へ!
派遣会社を変えたほうがいい人/変えないほうがいい人
変えたほうがいい人
- 担当者と連絡が取れず、業務上の相談が滞っている
- 同じ職場の他社スタッフと時給差が大きく、説明を求めても回答がない
- 派遣先とのトラブルを相談したのに、派遣会社が動かなかった
- 派遣先での評価が固まっていて、継続を望まれている
- 事業所抵触日までまだ1年以上ある
変えないほうがいい人
- 就業から半年未満で、まだ担当業務を一人で回せていない
- 事業所抵触日が半年以内に迫っている
- 派遣先が単一の派遣会社としか取引していない
- 契約書に再派遣を制限する条項がある
- 不満の中身が担当者ではなく、派遣先の人間関係にある
最後の項目は特に整理が必要です。職場そのものがつらいのであれば、派遣会社を変えても状況は変わりません。その場合は派遣先ごと変える判断になります。
働き始めてから担当者の対応を重視する人が増える
派遣会社登録ナビが2026年2月に実施した派遣社員1,005人への調査では、就業前に「派遣会社選びで重視した」と答えた人のうち担当者の対応・相性を挙げたのは15.7%でした。それが就業後には24.4%に増えています。
登録の段階では求人数や時給に目が向くものの、実際に働き始めると、連絡の速さや職場情報の共有の質が納得感を左右する。この調査結果はそれを示しています。
同じ調査では、直近の派遣就業で経験した不満の上位に「求人紹介が少ない・希望に合う求人が来ない(17.6%)」「想像していた仕事内容とのギャップ(16.0%)」「連絡が遅い・進捗が分からない(13.2%)」が並びました。担当者への不満で派遣会社を変えたいという動機は、決して特殊なものではありません。
【派遣社員1,005人調査】派遣会社選び、就業後に「担当者対応の重要性」を実感
登録先を増やすなら2〜3社まで
同調査では、直近の就業までに登録した派遣会社の数は『1社(48.5%)』が最多で、『2社(28.5%)』『3社(11.1%)』『4社以上(11.9%)』と続きました。2社以上に登録した人は合計51.5%です。
就業期間の希望別に見ると、2社以上の登録率は『1〜3ヶ月以内』希望層で60.2%、『3ヶ月以上』希望層で59.1%となり、『1日〜数日以内』の46.5%を上回りました。腰を据えて比較したい人ほど複数登録する傾向が出ています。
ただし、登録数を増やせば増やすほど良いわけではありません。4社以上に登録した層の満足度は65.0%で、全体の74.2%を下回りました。手当たり次第に登録するより、切り替え先の候補を2〜3社に絞って比較したほうが、連絡や進捗の管理も現実的です。
今の派遣会社を辞める前に別の会社に登録しておけば、切り替えが成立しなかった場合でも次の求人を探す動きを止めずに済みます。
派遣会社の複数登録は何社がベスト?1,005人調査でわかった目安と注意点
切り替え先の候補になる派遣会社
派遣会社登録ナビでは、①求人数、②口コミ・評判、③目的別対応力、④就業実現力の4つの基準で26社を比較しています。ここでは、切り替え先を探すときに候補に挙がりやすい3社を紹介します。
派遣会社の選び方|初心者が失敗しない5つのポイントと登録のコツ
スタッフサービス(編集部総合評価◎/求人数◎・評判○・目的対応◎・就業実現◎) 公開求人は約3.8万件(2026年7月時点)。事務・オフィスワークを中心に件数が多く、全国に対応しています。
取引先が広いため、今の派遣先と既に口座がある可能性を確かめる相手として最初に当たりやすい1社です。 スタッフサービスの公式サイトを見る
テクノサービス(編集部総合評価◎/求人数○・評判○・目的対応◎・就業実現◎) 公開求人は約2.0万件(2026年7月時点)。製造・軽作業に特化した構成で、登録から就業まで最短2〜5日という速さが特徴です。
切り替えが成立しなかったときの次の選択肢を早く確保したい場合に向きます。 テクノサービスの公式サイトを見る
パソナ(編集部総合評価◎/求人数○・評判◎・目的対応○・就業実現○) 担当者の対応やフォロー体制への評価が複数の媒体で共通して見られます。今の派遣会社の担当者対応が理由で替えたい人が比較対象に入れやすい1社です。 パソナの公式サイトを見る
よくある質問
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