
派遣で働くとき、健康保険はどこに加入するのか、保険証は手元に届くのか、疑問に思う人は少なくありません。
かつて多くの派遣社員が加入していた人材派遣健康保険組合(派遣健保)は2019年3月末で解散しています。さらに従来の健康保険証そのものも廃止され、2026年8月からはマイナ保険証か資格確認書がないと窓口で保険診療を受けられません。
この記事では、派遣の健康保険の加入先、保険証の現在の扱い、協会けんぽと組合健保の違い、加入の条件を整理します。
派遣の健康保険は「派遣会社」で加入する
派遣社員の雇用主は派遣先ではなく派遣会社です。健康保険と厚生年金も、条件を満たせば派遣会社を通じて加入します。派遣先が変わっても、同じ派遣会社で就業を続けているかぎり保険は継続します。
加入先は派遣会社によって次のどちらかです。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- その派遣会社やグループが持つ健康保険組合(組合健保)
現在は大手を含めて協会けんぽに加入している派遣会社が多くなっています。組合健保に加入している会社もありますが、加入先が見直されることもあります。実際、リクルートスタッフィングは長くリクルート健康保険組合に加入していましたが、2026年4月に協会けんぽへ移行しました。
保険料や付加的な給付は加入先によって差が出るため、気になる場合は登録時や就業開始前に各社へ確認しておくと確実です。
保険証は廃止され、マイナ保険証か資格確認書に切り替わった
「派遣会社から保険証が届く」という流れは、現在はありません。
従来の健康保険証は2024年12月2日以降、新たに発行されなくなりました。すでに持っている保険証の有効期限も2025年12月1日で終了しています。期限切れに気づかず持参した場合に使えるという取り扱いも設けられていましたが、これも2026年7月31日で終了しました。
出典:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)について」
現在、医療機関の窓口で使えるのは次の2つです。
マイナ保険証
マイナンバーカードに健康保険証の利用登録をしたものです。登録は本人が行います。派遣会社が資格取得の手続きを終えれば、そのままマイナンバーカードで受診できます。
資格確認書
マイナ保険証を持っていない人には、当分の間、加入先の保険者から資格確認書が無償で交付されます。本人の申請は不要で、保険者側から送られてきます。窓口で提示すれば、これまでと同じように保険診療を受けられます。
出典:厚生労働省「資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)」(2026年8月27日確認)
派遣で新しく就業を始める場合、確認しておきたいのは次の3点です。
- マイナンバーカードの保険証利用登録が済んでいるか
- 済んでいない場合、資格確認書が手元に届いているか
- 扶養家族の分もそろっているか
派遣健保は2019年に解散し、協会けんぽへ移った
人材派遣健康保険組合(派遣健保)は2019年3月31日で解散し、翌4月1日から加入していた派遣会社の多くが全国健康保険協会(協会けんぽ)へ移行しました。
出典:パソナ「【健康保険】全国健康保険協会(協会けんぽ)への移行について」
解散の背景には、高齢の加入者が増えたことによる医療費負担の重さがあります。派遣健保にかぎらず、多くの健康保険組合が高齢者医療への拠出金で財政を圧迫されてきました。
解散によって変わった主な点は次のとおりです。
| 項目 | 派遣健保(解散前) | 協会けんぽ |
|---|---|---|
| 保険料率 | 全国一律 | 都道府県ごとに毎年改定 |
| 運営 | 業界の健康保険組合 | 国が財政支援する公法人 |
| 付加給付 | 組合が独自に設定 | なし |
| 健康診断 | 組合の基準 | 生活習慣病予防健診(35歳以上が対象) |
保険証が切り替わったことに加えて、健康診断の受診条件や独自の給付が変わった点が実務上の違いでした。
なお、派遣会社は労働安全衛生法にもとづき、一定の条件を満たす派遣社員に定期健康診断を実施する義務があります。これは健康保険の加入先とは別の話なので、協会けんぽに移ったことで定期健康診断がなくなるわけではありません。
協会けんぽの保険料は都道府県ごとに違う
協会けんぽの健康保険料率は都道府県支部ごとに設定され、毎年度改定されます。新しい料率が適用されるのは、その年度の3月分(4月納付分)からです。
料率は支部ごとの年齢構成や所得水準の差を調整したうえで、加入者1人あたりの医療費にもとづいて算出されます。住んでいる場所ではなく、加入している支部で決まる仕組みです。
自分がどの支部に属するかは、資格情報のお知らせなどに記載されています。年度によって引き上げ・引き下げ・据え置きが分かれるため、最新の料率は公式で確認してください。
健康保険料率のほかに、次の2つが上乗せされます。いずれも全国一律で、料率は改定されます。
- 介護保険料率:40歳以上65歳未満が対象。健康保険料率と同じく年度の3月分から改定
- 子ども・子育て支援金:2026年4月分から徴収開始。開始時は0.23%で、2028年度にかけて段階的な引き上げが予定されている
いずれも保険料は労使折半なので、本人が負担するのは半分です。自分の支部の料率と標準報酬月額は、資格情報のお知らせなどで確認できます。
派遣会社を選ぶときに保険料率だけを比べるのは現実的ではありません。協会けんぽの料率は、加入している支部ごとに決まり、支部は本人の住所ではなく、雇用主である派遣会社の適用事業所の所在地で決まります。
派遣会社が本社で一括して手続きをしている場合は、就業地にかかわらず本社所在地の支部の料率が適用されます。自分がどの支部に属するかは、資格情報のお知らせなどで確認できます。
派遣で健康保険に加入する条件
派遣でも、次のいずれかにあてはまれば派遣会社の健康保険・厚生年金に加入します。
フルタイムに近い働き方の場合
1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、その事業所の正社員のおおむね4分の3以上であること。
短時間勤務の場合
現行の要件は次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 学生ではない
- 勤務先の厚生年金被保険者数が51人以上
このうち月額賃金8.8万円(いわゆる106万円の壁)は、2026年10月から撤廃されます。企業規模の要件も2027年10月から2035年10月にかけて段階的に廃止される予定です。
出典:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」、同「パート・アルバイトの方への社会保険の適用について」
派遣は契約更新をはさむため、加入のタイミングや契約が切れた期間の扱いが気になる場面があります。詳しくは派遣の社会保険はいつから加入できる?で整理しています。
派遣の健康保険に関するよくある質問
健康保険は、派遣会社を選ぶときの一要素
派遣健保が解散してから7年が経ち、大手の多くが協会けんぽに加入している現在、加入先による差は以前ほど大きくありません。保険証もマイナ保険証と資格確認書に一本化され、派遣会社ごとの違いが出にくくなっています。
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